福島第一原子力発電所事故後の環境中の放射線

福島第一原子力発電所の事故によって放射性ヨウ素などの人体に対 し健康被害が懸念される放射性物質が大気中に放出されました。すでに東北や関東の広い地域で放射性物質 が観測されています。理学部のある水戸市でも茨城県が設置した放射線監視用のモニタリンクポストで 0.25μSv/h(3月28日現在)の放射線が観測されています。 ( 素粒子論研究室のHPで水戸市の放射線のデータ について紹介しています。)
 放射性物質を特定するためには放射線のエネルギー・スペクトル を計測する必要があります。地震からの復旧作業に手間取ったために計測を始めるまでに時間を要しまし たが3月23日からGe半導体検出器による環境中の放射線(γ線)のエネルギー・スペクトルの計測を開始 しました。検出器は理学部 E棟3階の実験室内に鉛ブロック等による遮蔽を一切行わない状態で置かれています。この状態で 24時間計測を行った結果をグラフにしました.比較のために2010年1月のデータ(赤)がプロットしてあります.

3月23日正午-24日正午
3月24日正午-25日正午
3月25日正午-26日正午
3月26日正午-27日正午
3月27日正午-28日正午
3月28日正午-29日正午
3月29日正午-30日正午
3月30日正午-31日正午
4月19日

エネルギーが100-2000keVの範囲のγ線の24時間内の全計数の推移

年月日 計数/24h 平常時との比較
平常時 5.74×106
2011年3月23日-24日 7.04×106 +23%
2011年3月24日-25日 6.83×106 +19%
2011年3月25日-26日 6.68×106 +16%
2011年3月26日-27日 6.54×106 +14%
2011年3月27日-28日 6.45×106 +12%
2011年3月28日-29日 6.38×106 +11%
2011年3月29日-30日 6.32×106 +10%
2011年3月30日-31日 6.24×106 +8.7%
2011年4月19日 6.10×106 +6.3%

雨水による局所的な土壌汚染(5/8)

放射線量が低い地域でも微量の放射性物質が地面に残留しているために主として放射性セシウム Cs-134, Cs-137が 検出されます. しかし, 放射線量が低いとされる地域でも雨水を雨樋に集め地面にそのまま浸透させ ているような場所では非常に高い放射線量が観測されることがあります. 原子炉建屋の水素爆発に 伴って放出された放射性物質が放射性降下物として屋根や屋上に降り積もり, それが降雨に洗 い流されて雨樋の排水口付近の地表で雨水が濾された状態で留まっているためと考えられます. 次の図は5月3日にそのような場所から採取した土をGe半導体検出器で計測して得たデータを プロットしたものです. 検出器全体を5cmの鉛で遮蔽し, 100cc程度のサンプルを検出器から 10cm程度離して24時間計測を行いました. 検出器を環境中に解放した状態で観測した場合には 検出されなかった放射性物質(ピークエネルギーから Nb-95, Ag-108m, Ag-110m, Te-129, Te-129m, Cs-136, La-140と推測される)のγ線のピークが観測されました. (原発事故に由 来すると思われる放射性元素を青色で表示)


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